「アルチンボルト展」国立西洋美術館で開催中!謎の絵画の全貌を一挙レポート

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花火特集2017

東京・上野の国立西洋美術館で、2017年6月20日(火)から9月24日(日)まで「アルチンボルト展」が開催されています。アルチンボルトの代表作「四季」の《春》《夏》《秋》《冬》や「四大元素」の《水》《大気》《火》《大地》を含む作品、10数点が日本初上陸。開催前から大きな話題を集めている展覧会の見どころを、asoview!編集部員の取材を元に一挙大公開します!

ジュゼッペ・アルチンボルトとは

16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍した、寓意的な肖像画が印象的な画家ジュゼッペ・アルチンボルト。1527年にイタリア・ミラノに画家の息子として生まれ、ウィーンやプラハで生活した後に、ハプスブルク宮廷のアートディレクターになります。宮廷の装飾や衣装のデザインを手掛け、伝統的な宗教画作家としても活躍しました。

1560年代頃から描かれはじめた、野菜や果物、魚、花、道具といったモティーフを組み合わせた独特な肖像画が彼の代表的な作風として親しまれ、現在もなお世界中の人々を魅了し続けています。奇想と知、驚異と論理が交差する彼の絵画は、まるで暗号のよう。見ている人を絵解きの世界へと導きます。

アルチンボルトの代表作「四季」「四大元素」が全点集結!

今回の「アルチンボルト展」の最大の見どころは、やはり彼を代表する表現技法「寄せ絵」で描かれた作品の数々です。世界各地の主要美術館に所蔵された作品がこの度、西洋美術館に大集合します!アルチンボルトについてここまで詳しく紹介する展覧会はもちろん日本初の試み。ぜひ、この機会にユーモアあふれる知略の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

自分の顔がアルチンボルト風肖像画に!「アルチンボルトメーカー」

展覧会会場入り口にある「アルチンボルトメーカー」です。カメラの前に立つと、自分の顔がフルーツや野菜によって描かれ「アルチンボルト風肖像画」が完成します!

似ているような似ていないような肖像画は、アルチンボルトが描いた作品をベースに、約200種の食べ物が組み合わされ「髪型」「目」「鼻」「口」「顔の輪郭」など様々な角度から分類・抽象化し、なんと人の顔を数百万パターンを描けるのだとか。
「アルチンボルトメーカー」は、「アルチンボルトが、私の顔を描いてくれたら…」そんな夢が叶う開催期間中しか体験できない貴重な企画になっています。来場の記念にぜひ体感してみてください!

Ⅰ アルチンボルトとミラノ

アルチンボルトの画家としての生涯は、大きく3つの期に分けられます。第一期(~1562年)はミラノでの修行時代・第二期(1562~87年)はウィーンやプラハに滞在し、ハプスブルク家の3代の皇帝に仕えた宮廷時代・第三期(1587~93年)は、成功をおさめた後にミラノへ帰郷し、後世への伝達に努めた6年間です。
アルチンボルト展は、アルチンボルトがどのような経緯で「四季」や「四大元素」などの彼ならではの作品を書くに至ったかを辿ります。

展覧会は、第一期に描かれた作品の展示からはじまります。アルチンボルトだけでなく、彼が影響を受けたレオナルド・ダ・ヴィンチなどの作品も多数展示されています。ステンドグラスの図案制作をしていた師であり父のビアージョと共に1540~50年代にかけてミラノで活躍し始めたアルチンボルト。彼の作風には、イタリア・北西部に位置するロンバルディア地方の自然主義(自然のありのままを観察し、「真実」を描く作風のこと)やレオナルド・ダ・ヴィンチ以来の科学的な観察をもとに描く精巧な作風が大きく影響しているのだとか。

この時期に描き留められたイメージの数々が組み合わされ、のちに彼の代名詞である「寄せ絵」が誕生したと言われています。

ジュゼッペ・アルチンボルト「自画像」・プラハ国立美術館

アルチンボルトが自ら描いた「自画像」です。油彩の作品が多い彼のイメージとは異なり、ペン一本で描かれるこの作品は画家の技が光ります。

レオナルド・ダ・ヴィンチ「鼻のつぶれた禿頭の太った男の横顔」・ウィンザー城、イギリス王室コレクション

死後500年経った今でも注目され続ける画家、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品も。アルチンボルトの絵画にしばしば見られるグロテスクな表現やイメージは、自然観察を重視するレオナルド・ダ・ヴィンチの作品との関連が指摘されています。
アルチンボルトの画家人生初期の作品も必見です。

Ⅱ ハプスブルク宮廷

マルティーノ・ロータ「甲冑を身につけた皇帝ルドルフ2世」・ウィーン美術史美術館 絵画館

アルチンボルトは、1562年にハプスブルク家の宮廷にやってきて以来、ウィーン・プラハにおいてフェルディナント1世・マクシミリアン2世・ルドルフ2世の三代の神聖ローマ帝国に仕えました。皇帝一家の肖像画を数多く手がける一方で、ハプスブルク宮廷の祝祭を取り仕切る演出家や美術品のバイヤーも務めていました。
また、当時彼が住み込んでいた宮廷には付属の植物園や動物園があり、それら世界中から集められた数々の生き物が彼にさらなる想像・発想力を与えたと言われています。

ジュゼッペ・アルチンボルトに帰属「大公皇女(マルガレーテ)」・ウィーン美術史美術館 絵画館

フェルディナント1世の娘、マルガリーテの肖像画です。

絵画の他にも、当時宮廷で使われていた鉢や皿などの展示もあります。豪華な装飾品の数々は、宮廷の華やかな暮らしを物語ります。

代表作の「四季」「四大元素」

ジュゼッペ・アルチンボルト  左から「四季」《冬》・ウィーン美術史美術館 絵画館、「四大元素」《水》ウィーン美術史美術館 絵画館

ハプスブルク宮廷の展示に続いて、いよいよ代表作「四季」「四大元素」などの「寄せ絵」の展示が始まります。
16世紀中頃のルネサンス期が終わりを迎え、ルネサンスという「究極の芸術」を乗り越えるべく、試行錯誤した後に生まれたのがアルチンボルトの「寄せ絵」という傑作です。

ジュゼッペ・アルチンボルト「四季」《春》・王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館

トリックアートのような、パズルのような彼の作品は、見る人を夢中にさせます。

「四季」

ジュゼッペ・アルチンボルト「四季」《春》・王立サン・フェルナンド美術アカデミー美術館

これは、1563年に最初に描かれた連作「四季」の《春》です。アルチンボルトの作品でもっとも有名と言っても過言ではないこの作品は、四季の植物によって肖像画が構成され、若者の《春》から老人の《冬》まで、それぞれの季節が世代に対応するように構成されています。

ジュゼッペ・アルチンボルト「四季」《夏》・デンヴァー美術館

ちなみに、《春》《夏》は女性、《秋》《冬》は男性が描かれていると一説では囁かれています。ラテン語やイタリア語で「春」「夏」は女性名詞、「秋」「冬」は男性名詞と言うことから捩られているそうです。
あまりにも最初の連作「四季」が好評だった為、その後数回にわたって「四大元素」など異なるテーマを題材としてた別ヴァージョンの絵が制作されます。

「四大元素」

ジュゼッペ・アルチンボルト 「四大元素」《水》ウィーン美術史美術館 絵画館

世界を構成する4つの要素《空気》《火》《土》《水》をテーマに構成され、「四季」よりもさらにモティーフが複雑に絡み合う連作「四大元素」。こちらの《水》は、62種の魚や海獣など水に関連する生き物によって描かれているのだとか!
「四大元素」は、海の生き物や動物、鳥によって皇帝が描かれており、《水》もよく見るとウニのような生物のトゲによって王冠が表現されていることがわかります。

ジュゼッペ・アルチンボルト「四大元素」《大地》・リヒテンシュタイン侯爵家コレクション

顔はもちろん、身に着けている服や装飾まで動物で描かれています。

「四季」「四大元素」の拡大パネル

アルチンボルトの計算し尽くされた作品たちには、まだまだからくりが仕掛けられています。なんと、「四季」と「四大元素」も組み合わせて楽しめるように構想されているのです。例えば、《水》は冷たく湿っているので《冬》、《火》は燃えるように熱いので《夏》と対になっており、実際に展示も向かい合うように並べられています。

Ⅲ 自然描写

16世紀に印刷技術の発展と共に確立した「博物図鑑」という絵画ジャンル。ここでは、自然をいかにリアルに描くか、を追及した作家たちの作品が展示されています。

ジュゼッペ・アルチンボルトの追随者「アンコウ」・ウフィツィ美術館 素描版画室

現在のように写真がない当時、生き物の生体を描写した絵画は知識の拡散に大きな役割を果たし、科学も著しく進歩しました。描かれ始めたときは、生物研究者や科学者の間で需要が高まっていましたが、やがて君主や貴族たちからも娯楽の一環として求められるようになります。

アルチンボルトの連作も、彼が皇帝に仕えていた時代に宮廷の敷地内にあった動物園、植物園で描いた自然素描が応用されて構成されています。

Ⅳ 自然の奇跡

南ドイツの画家「エンリコ・ゴンザレス、多毛のペドロ・ゴンザレスの息子」・ウィーン美術館 絵画館

これは、1547年のパリに一人連れてこられたカナリア諸島出身の少年、ペドロ・ゴンザレスの絵です。この少年は、胸や背中、さらには顔までもびっしりと長い毛が生えていました。現代では遺伝性の多毛症として知られていますが、当時は研究もされていなかったため、このあまりにも珍しい少年を好奇な存在として崇めました。
アルチンボルトは寄せ絵の画家として「絵画の驚異」を生み出しましたが、多毛のペドロは事前が生み出した「生きる驚異」として受け止められていたことから、「驚異」という親和性のもとアルチンボルト展に展示されることになりました。
 

Ⅴ 寄せ絵

バルトロメオ・ボッシ「女性の頭部」・ウィーン美術館 絵画館

アルチンボルトと同じ時代に、彼と同じような「寄せ絵」の手法を使った絵画がインドやイスラム、さらには江戸時代の日本でも見られるようになりました。ここでは、アルチンボルト以外の作家が描いた「寄せ絵」を見ることができます。

Ⅵ 職業絵とカリカチュアの誕生

アルチンボルトは、植物や野菜、動物だけでなく、本や樽などそれぞれの職業に関連したモティーフが組み込まれた、職人の肖像画も描いています。

ジュゼッペ・アルチンボルト「ソムリエ(ウェイター)」・ウィーン美術館 絵画館

ワイン樽やボトルで構成されていてる「ソムリエ」という職業絵。日本にある唯一のアルチンボルトの作品です。

ジュゼッペ・アルチンボルト「司書」・スコークロステル城

宮廷に仕えていた学者が描かれたと言われている「司書」という作品です。
どこか戯画的に表現された作風が職業絵の特徴で、「司書」では頭に本を乗せた“頭の固い学者”が描かれています。

Ⅶ 上下絵から静物画へ

上下どちらからも鑑賞できる作品は、以前から沢山ありましたが、アルチンボルトの描く「上下絵」のようにさかさまにするとまったく異なるイメージが現れるものはこれまでにありませんでした。
「上下絵」は主に、アルチンボルトが故郷のミラノに戻った後に描かれました。

ジュゼッペ・アルチンボルト「庭師/野菜」・クレモナ市立美術館
ジュゼッペ・アルチンボルト「コック/肉」・ストックホルム国立美術館

人にも見え、逆さまにすると食べ物の絵画にも見えるアルチンボルトの「上下絵」。これらの絵を、肉や野菜の静物画として見た場合、これらはイタリアにおける最初の静物画となります。イタリアで最初に独立した静物画を描いたのはカラヴァッジョやアンブロージョ・フィジーノと言われていますが、彼らは共にアルチンボルトと同郷のミラノ出身で、ほぼ確実に彼の作品を知っていたと考えられます。
よって、彼の描いた「上下絵」はイタリアの静物画の発展にも画期的な役割を担った作品と言っても過言ではありません。

オリジナルグッズもチェック!

アルチンボルト展オリジナルの限定グッズも多数あります!お気に入りの作品が描かれたグッズは思わず欲しくなってしまいます。

奇想と知、驚異と論理が交差するアルチンボルトワールド「アルチンボルト展」に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

イベント概要
名称:アルチンボルト展
開催期間:2017年6月20日(火)~2017年9月24日(日)
時間:午前9時30分~午後5時30分、毎週金・土曜日:午前9時30分~午後9時
(ただし6月23日、24日は午前9時30分~午後8時)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、7月17日、8月14日、9月18日は開館)、7月18日(火)
会場:国立西洋美術館 企画展示室
所在地:東京都台東区上野公園7−7
料金:一般1,600円、大学生1,200円、高校生800円※中学生以下は無料
公式サイト:http://www.mucha2017.jp/

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