ベルギー美術の"奇想"の歴史を辿る!「ベルギー 奇想の系譜」展が渋谷で開催

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「ベルギー 奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」展が、渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムにて開催されます。会期は2017年7月15日(土)~9月24日(日)まで。ボス派や、ブリューゲル、マグリットやヤンファーブルなど、ベルギー・フランドルとその周辺地域で発展した「幻想絵画」とその伝統を受け継いだ現代までの秀作が一堂に会します。アートファンの方はお見逃しのないようにしてくださいね。

「ベルギー 奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」展が渋谷で開催

ピーテル・ブリューゲル(父)[原画]、ピーテル・ファン・デル・ヘイデン[彫版] 《大食》
1558年 エングレーヴィング・紙 神奈川県立近代美術館

現在のベルギーとその周辺地域では、中世末期に発達した写実的描写のもと、独自の幻想的な絵画が発達していきました。しかし、18世紀、自然科学の発達と啓蒙思想がヨーロッパを席巻する中、不可解なものは解明されてゆき、次第に心の闇に光が当てられるようになります。かつての幻想美術の伝統が引き継がれるのは、産業革命後の19世紀。人間疎外、逃避願望を背景とした象徴主義ににおいてでした。画家たちは夢や無意識の世界にも価値を見出し、今日もこの地域の芸術に強い個性と独自性を与えつづけています。

ジェームズ・アンソール 《オルガンに向かうアンソール》 
1933年 油彩・キャンヴァス メナード美術館

「ベルギー 奇想の系譜」は、ベルギーとその周辺地域において、幻想的な世界を作り出したこの一連の流れを、約500年にわたる「奇想の系譜」ととらえ、紹介するもの。15、16世紀を代表するボスやブリューゲルの流れをくむ作品から、19世紀のベルギー象徴派のクノップフ、アンソール、さらには、シュルレアリストのマグリット、デルヴォーなどや、現代のヤン・ファーブルまで、約120点の作品を通して、ベルギー美術の歴史を辿っていきます。

注目ポイントはココ!

中世から現代まで、ベルギー美術の500年を辿る!

15、16世紀のフランドル絵画から、19世紀のベルギー象徴派、そしてコンテンポラリー・アートの作品まで、約120点の作品が登場。ベルギー美術の500年の旅へと鑑賞者を誘います。

古今のスター作家が勢揃い!

ボス派やブリューゲル、ルーベンス、クノップフ、アンソール、さらに、マグリットやデルヴォー、ヤン・ファーブルなど、ベルギーとその周辺地域を代表する総勢30名の作家の作品が一堂に集合します。

様々な表現で、ベルギー美術の魅力を堪能!

絵画や版画はもちろんのこと、彫刻、音、インスタレーションなどの様々な表現で、幻想と耽美、皮肉とユーモアなど、ベルギー美術の魅力である自由で独創性あふれる世界を楽しめます。

各章の見どころと注目作品をご紹介!

第1章 15~17世紀のフランドル美術

ぺーテル・パウル・ルーベンス[原画]、リュカス・フォルステルマン(父)[彫版] 《反逆天使と戦う大天使聖ミカエル》
1621年 エングレーヴィング・紙 ベルギー王立図書館

本章ではボス派の画家やブリューゲル、ルーベンスらの作品をご紹介します。ベルギー絵画の「奇想」のルーツは、現在のベルギーとの国境に近いオランダ南部の都市・セルトーヘンボスに生まれた奇才・ヒエロニムス・ボスとされます。ボスは「地獄」を鮮烈なイメージで描き、闇をうごめく異形で埋め尽くしました。

ボスの死後も、ボス派の画家たちは、豊かなバリエーションで高まる需要に応え、中でも、「第二のボス」と呼ばれたピーテル・ブリューゲル(父)が描いた、ボス風の悪魔や怪物は、ブリューゲルの鋭い観察眼によって、親しみやすさや日常性が増し、次世代にも継承されていきます。そして、17世紀バロック美術の巨匠・ルーベンスは、リアリティと深い感情表現を追及。恐れや怒りなど激しい感情表現の表出としての「奇想」の表現を生み出しました。

日本初公開!異界めぐりの逸話を描いたボス工房の作品が登場

ヒエロニムス・ボス工房 《トゥヌグダルスの幻視》 1490-1500年頃 油彩・板 ラサロ・ガルディアーノ財団
© Fundación Lázaro Galdiano

異界めぐりの逸話を描いたボス工房の作品《トゥヌグダルスの幻視》が初来日。《トゥヌグダルスの幻視》とは、アイルランドの修道士が語ったとされる逸話です。主人公の騎士トゥヌグダルスは、3日間の仮死状態に陥っている間に天使によって天国と地獄に導かれ、そこで恐ろしい懲罰を目にし、目覚めた後に悔悛します。本作は、左下に主人公と天使、さらには大罪とそれに関連づけられた懲罰が各所に散りばめられています。

ヤン・マンデイン《パノラマ風景の中の聖アントニウスの誘惑》

聖アントニウスとは砂漠での修行で知られるキリスト教の聖人です。当時、「聖アントニウスの火」と呼ばれた奇病の治癒の奇跡をもたらす聖人と考えられていました。画面中央の黒いマントを着て、跪く人物が聖アントニウス。そして、彼の後ろには様々な怪物たちが列をなしています。また、画面手前にみられる卵の殻やムール貝、水に浮かぶイチゴのような果物はボスの作品から引用されているものです。

ピーテル・ブリューゲル(父)「大きな魚は小さな魚を食う」 

ブリューゲルの作品は、鋭い観察眼でとらえられた自然や民衆の暮らしが描かれるとともに、ボス的な趣向ともいえる「異界・非日常」的な要素が日常的な枠組の中で描き出されています。なお、会場ではブリューゲル作品のアニメーション映像も展示。動き出す空飛ぶ魚や歩く魚、大きな魚のお腹の中から小さな魚が飛び出てくる臨場感も楽しめますよ。

19世紀~20世紀のベルギー象徴派・表現主義

ジャン・デルヴィル 《レテ河の水を飲むダンテ》
1919年 油彩・キャンヴァス 姫路市立美術館

1830年、ベルギーは国家として独立を果たします。工業化と都市化が進む1880年代後半、科学の世紀に背を向けて、言葉で言いがたいもの、目には見えないものを追求し、想像力と夢の世界に沈潜する象徴派と呼ばれる芸術家が現れます。ボードレールの敬愛された画家・ロップスは、中世からルネッサンスにかけて北方美術が好んで取り上げてきた骸骨たちの舞台を近年に蘇らせました。一方、クノップフの暗示に満ちた静寂な世界は、溶けない謎へと鑑賞者を引き込んでいきます。

そして、画家が抱えていた孤独や怯えが不穏なうねりとなって、ついに叫びだす自我を描いたのがアンソールでした。アンソールが描いた骸骨と仮面は、隠されるもの、隠すもの、暴かれるものの性質を内包しています。この関心は、次世代のマグリットから現代に続く、「言葉とイメージ」の問題へと展開していきます。

フェリシアン・ロップス《舞踏会の死神》

死神として骸骨となった女が、カトリックの司祭がミサで着るガウンを身にまとい、恍惚のダンスを舞っています。教会を風刺する本作は大型の画面に描かれており、作者の深い思い入れが感じられます。作者は、反カトリック的、反ブルジョワ的強迫観念を持ったフェリシアン・ロップス。版画、挿絵を中心に、油彩画、水彩画、著述など様々な分野で才能を発揮しました。

フェリシアン・ロップス「娼婦政治家」 

フェリシアン・ロップス[原画]、アルベール・ベルトラン[彫版] 《娼婦政治家》
1896年 多色刷銅版画・紙 フェリシアン・ロップス美術館

娼婦の女性と豚の足元には、彫刻、音楽、詩、絵画と書かれた擬人像があり、女性と豚はこれらの芸術を理解せずに踏みにじっています。作者は現代の政治家には私利私欲に目がくらみ、盲目となった者がいることをこの娼婦で表しており、メッセージ性の強い作品となっています。

ジェームズ・アンソール《ゴルゴダの丘》

本作の図像は、ゴルゴダの丘で2人の罪人とともに十字架につけられたキリストを描く、宗教画の伝統的な約束事に基づいたものです。しかし、よく見てみると十字架上部の罪標には「ENSOR(アンソール)」と記され、キリストの脇腹を刺す人物の槍には「FÉTIS(フェティス)」という美術批評家の名前の旗がついています。
 

20世紀のシュルレアリスムから現代まで

現代に受け継がれた「奇想」の表現はオブジェ、音、インスタレーションへと領域を広げ、今もなお創造活動の豊かな源泉であり続けています。

この章では、マグリットやデルヴォーらシュルレアリスムの芸術家たち、またヤン・ファーブルをはじめとする現代作家らの作品をご紹介します。

レオ・コーペルス「ティンパニー」

筆を咥えた骸骨が、ドラムにリズミカルに打ち付けられています。数多くの戦地となってきたベルギー芸術には死の表象が絶えず見え隠れするのが特徴の1つですが、この根深く厳粛な難題にユーモアで答えるコーペルスの表現は、ベルギーの芸術家が培ったアイデンティティの1つといえるでしょう。

パトリック・ファン・カーケンベルグ「2007-2014年、冬の日の古木」

一見すると変哲のない老木のデッサンのように見えますが、作家が想像を自由にめぐらせて描いたものであり、この世のどこにも存在しない木になっています。作家・パトリック・ファン・カーケンベルグは、このような古木を数多く描き、その幹にはしばしば扉や窓をとりつけています。

トマス・ルルイ「生き残るには脳が足らない」

トマス・ルルイ 《生き残るには脳が足らない》 2009年 ブロンズ ロドルフ・ヤンセン画廊
© Studio Thomas Lerooy, Brussels, courtesy rodolphe janssen, Brussels /Photo: Philippe D. Hoeilaart

古代ギリシア時代から続けられてきた、理想の人体への飽くなき探求。それは、現代の過剰なモデル崇拝やダイエットの日常化にも現れています。本作では、傍目から見れば十分なほど持っているはずのものでもまだ飽き足らない姿、大きすぎる頭で自滅している現代の人間像が物語られています。

イベント詳細
名称:ベルギー 奇想の系譜 ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
住所:東京都渋谷区道玄坂2-24-1
会期:2017年7月15日(土)~9月24日(日)
開館時間:10:00〜18:00 (入館は17:30まで)
※毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
休館日:7月18日(火)、8月22日(火)
Bunkamura ザ・ミュージアム 公式サイト:http://www.bunkamura.co.jp/
展覧会特設サイト:http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_belgium/

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