「宿命のライバル」を素描で対比!「レオナルド×ミケランジェロ展」が6月からスタート

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東京都千代田区にある三菱一号館美術館で「レオナルド×ミケランジェロ展」が開催されます。期間は、2017年6月17日(土)〜9月24日(日)まで。ルネッサンスに活躍した天才芸術家2人、レオナルド・ダ・ヴィンチとミケランジェロ・ブオナローティの素描、油彩画、手稿、書簡など、約65点が展示されます。「宿命のライバル」とも言われた2人の作品を見比べる絶好の機会です。アートファンの方は必見ですよ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ
《少女の頭部/<岩窟の聖母>の天使のための習作》
1483-85 年頃 トリノ王立図書館蔵 ©Torino, Biblioteca Reale

「レオナルド×ミケランジェロ展」とは?

15世紀イタリアで画家として才能を発揮し、建築、科学、解剖学の分野にまで関心を広げ「万能人」と呼ばれたレオナルド・ダ・ヴィンチと、10代から頭角を現し「神のごとき」と称された世紀の天才彫刻家ミケランジェロ・ブオナローティ。
2017年6月17日(土)からスタートする「レオナルド×ミケランジェロ展」は、芸術家の力量を示す上で最も重要とされ、全ての創造の源である素描 (ディゼーニョ)に秀でた2人を対比する日本初の展覧会です。

レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく
《レダと白鳥》 1505-10 年頃
ウフィツィ美術館蔵
©Firenze, Gallerie degli Uffizi, Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi

また、素描のほかにも、トリノ王立図書館やカーサ・ブオナローティが所蔵する油彩画、手稿、書簡など、約65点が一堂に集結します。加えて、2人の「最も美しい」素描とされる、レオナルド作《少女の肖像/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》と、ミケランジェロ作《〈レダと白鳥〉のための頭部習作》も、この特別展のために揃って来日。イタリア・ルネッサンスを代表する2人の巨匠の作品を間近で鑑賞できる貴重な機会です。

「宿命のライバル」!ダ・ヴィンチとミケランジェロ

ミケランジェロ・ブオナローティ 《背を向けた男性裸体像》
1504-05 年
カーサ・ブオナローティ蔵
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

イタリア・ルネッサンス期に活躍した2人の天才、レオナルドとミケランジェロ。レオナルドが25歳上ですが、レオナルドとミケランジェロは「宿命のライバル」と言われており、興味深いエピソードが伝えられています。中でも最も知られるエピソードとして挙げられるのが、フィレンツェにあるヴェッキオ宮殿のエピソード。ヴェッキオ宮殿の大会議室で《アンギアーリの戦い》の壁画制作を1503年に執政官から依頼されたレオナルド は、フィレンツェ市民からの期待を背負っていました。数か月後にミケランジェロも、同会議室の隣り合った壁に《力ッシナの戦い》を描くよう依頼され、製作に着手します。その後、レオナルドは彩色を始めてから製作を中止、一方のミケランジェロも下絵の完成後に放棄してしまいます。実現していれば、人々の注目を大いに集めたことでしょう。

2人の天才の素描が勢揃い!「最も美しい」とされる素描2つにも注目

フランチェスコ・ブリーナ(帰属)
《レダと白鳥(失われたミケランジェロ作品に基づく)》
1575 年頃 カーサ・ブオナローティ蔵
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

レオナルド、ミケランジェロの弟子や追随者にとって、学ぶべき対象、お手本として扱われたのが絵画、彫刻、そして素描。両者とも、素描、素描を模写することが芸術家にとって、いかに重要であるかを弟子たちに繰り返し説いていたと伝えられています。

また、ルネサンス期では、「(自然)を母として、(素描)を父とすると、(建築)(彫刻)(絵画)の3姉妹がいる」という関係が強調されており、自然に則ってデッサンすることは、各芸術の基本中の基本であり、決して軽んじることの出来ない大事なものと位置づけられていました。それだけでなく、素描そのものが作品としての価値を持つほど重要な価値を持っていたと言われています。

本展では、そんな芸術家の力量を示す上で最も重要且つ、全ての創造の源である素描(ディゼーニョ)で2人を対比。「最も美しい」とされる素描、レオナルド作《少女の肖像/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》と、ミケランジェロ作《〈レダと白鳥〉のための頭部習作》にも注目です。

レオナルド作《少女の肖像/〈岩窟の聖母〉の天使のための習作》

レオナルド・ダ・ヴィンチ
《少女の頭部/<岩窟の聖母>の天使のための習作》
1483-85 年頃
トリノ王立図書館蔵 ©Torino, Biblioteca Reale

左利きのレオナルドは左上から右下へのハッチングが特徴的で、斜線の重なりによって濃淡が作られ、陰影が生まれています。左眼の上瞼、目元、左頬、ほうれい線、鼻梁、左頬、口元といったところに鉛白によるハイライトが施されており、光が当たってることを意味しています。

ミケランジェロ作《〈レダと白鳥〉のための頭部習作》

ミケランジェロ・ブオナローティ
《<レダと白鳥>の頭部のための習作》
1530 年頃
カーサ・ブオナローティ蔵
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

本作は、ミケランジェロの素描としては最も知られている1点で、モデルは弟子のアントニオ・ミーニという男性と考えられています。右利きであるミケランジェロは、クロスノッチングと呼ばれる、斜線を交差させる技法を使用しています。
頭部をよく観察すると、それによって立体感を出し、あたかも「削り取るように」素描を描いています。また、本作では赤チョークが用いられており、濃淡によって凹凸を巧みに表現されています。

「レダと白鳥」の模倣作品に見る2人の対比

「レダと白鳥」は、スパルタ王テュンダレオースの妻であるレダを、白鳥に化けたゼウスが誘惑したというギリシャ神話の中のエピソード。彫刻や絵画などにおける題材として頻繁に用いられたことでも知られています。

レオナルド、ミケランジェロの両者ともに、絵画となっていながらも、現在は失われてしまった「レダと白鳥」。本展では、追随者による2つの模倣作品を通して、オリジナルの姿を明らかにし、比較していきます。

ミケランジェロに基づく《レダと白鳥》

フランチェスコ・ブリーナ(帰属)
《レダと白鳥(失われたミケランジェロ作品に基づく)》
1575 年頃 カーサ・ブオナローティ蔵
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

ミケランジェロの失われたオリジナル作品はフェッラーラ公アルフォンソ・デステから依頼されたもの。自身の作品であるジュリアーノ・デ・メディチの墓碑に置かれた《夜》の寓意像の彫刻作品を思わせる、うつむいた女性の優美な横顔が印象的に描かれ、柔らかな雰囲気の中でレダと白鳥が向かい合っています。オリジナル作品は、ミケランジェロの弟子・ミーニの手によりフランスへ渡りましたが、17世紀半ばに焼却。本作はオリジナルの下絵に基づき、後代の画家・ブリーナにより制作されました。

レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく《レダと白鳥》

レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく
《レダと白鳥》 1505-10 年頃
ウフィツィ美術館蔵
©Firenze, Gallerie degli Uffizi, Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi

ミケランジェロの作品と比べて男性性の強調された白鳥が印象的なレオナルドの《レダと白鳥》。画面左下には「レダには、2 組の双子が卵から生まれた」とするギリシア神話に基づき、大きな卵から生まれたばかりの二組の双子が描かれています。
本作は、レオナルドの弟子の中でも筆頭としてあげられるメルツィの作品の可能性もあり、レオナルドが生きた時代に描かれたものと考えられています。左手に花を持つレダのポーズ、子どもに目を落とす様子はレオナルドが本来描いた構図とほぼ同じものとして現在はフイレンツェのウフィツィ美術館が所蔵しています。

そのほかの注目作品をピックアップ!

素描を中心に、油彩画、手稿、書簡など、約65点が展示される「レオナルド×ミケランジェロ展」。その中でも特に注目の作品をご紹介します。「万能人」と呼ばれた画家・レオナルドと、「神のごとき」と称された世紀の天才彫刻家・ミケランジェロ。2人の作品をじっくり見比べてみましょう。

ミケランジェロの3作品をご紹介

《背を向けた男性裸婦像》

ミケランジェロ・ブオナローティ 《背を向けた男性裸体像》
1504-05 年
カーサ・ブオナローティ蔵
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti
 

本作は、フィレンツェ共和国のピエロ・ソデリーニがミケランジェロに発注したヴェッキオ宮殿の壁画《力ッシナの戦い》のために描かれた習作です。伸び上がるような姿勢の男性の背面には、筋肉の付き方が事細かに描かれており、彫刻家・ミケランジェロの捉え方がうかがえます。レオナルドの《アンギアーリの戦い》の競作としても知られる作品で、ミケランジェロは下描きが終了した時点で、ユリウス2世によってローマに呼び戻されたため、《力ッシナの戦い》は未完に終わりました。

《河神》の習作

ミケランジェロ・ブオナローティ
《河神》 1525 年頃
カーサ・ブオナローティ蔵
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

蝋で制作された彫刻の習作で、主題はイエス・キリストと共に十字架に架けられた盗人であるとされてきましたが、現在はギリシア神話の河の神と言われています。この仮説は、カーサ・ブオナローティが所蔵するより大きな《河神》の作品と比較しても根拠があります。本作は、メディチ家礼拝堂のために作られ、場所を示す役割を与えられる予定でしたが実現しませんでした。なお、このような彫刻モデルは、石材切り出しの職人に手渡され、彫刻の寸法の目安として使用され、鉱山までの輸送に耐える素材で制作されました。

《イサクの犠牲》のための習作

ミケランジェロ・ブオナローティ
《イサクの犠牲》
1535 年頃 カーサ・ブオナローティ蔵
©Associazione Culturale Metamorfosi and Fondazione Casa Buonarroti

こちらの作品は、彫刻レリーフのための素描です。息子イサクに手をかけようとするアブラハムに対し、天使が止めに入っていくシーンを描いています。アブラハムと天使の距離が非常に近いことが本主題を扱う上でのミケランジェロの最大の特徴といえるでしょう。また、イサクの左膝の位置は未決定のためか、複数の膝が動くように描かれています。

レオナルドの3作品+1

《髭のある男性頭部(チェーザレ・ボルジャ?)》

レオナルド・ダ・ヴィンチ
《髭のある男性頭部(チェーザレ・ボルジャ?)》
1502 年頃
トリノ王立図書館蔵 ©Torino, Biblioteca Reale

軍人チェーザレ・ボルジャの肖像といわれていますが、確実な証拠はありません。同一の肖像を異なる角度から捉えて3つの像を描いた本作品は、他視点性により絵画や素描も「彫刻の様な立体性」に劣らず表現ができるというレオナルドによる表明でもあると考えられています。
また、ヴァザーリによれば、ジョルジョーネの作品(現在は消失)にもモデルと鏡面を描いて異なる角度から同一のモデルを描く作品が制作されており、絵画の他視点性が強調されています。 

《大鎌を装備した戦車のニつの案》

レオナルド・ダ・ヴィンチ
《大鎌を装備した戦車の二つの案》
1485 年頃
トリノ王立図書館蔵 ©Torino, Biblioteca Reale

レオナルドもミケランジェロも技師として仕事を依頼されることが多く、戦争の多い時代にはむしろそちらが本業であることもありました。本作はレオナルドが考案した兵器ですが実現しませんでした。ここでは馬車で大鎌を回転させ敵兵をなぎ倒していく様子が描かれて
います。 

《老人の頭部》

レオナルド・ダ・ヴィンチあるいは
チェーザレ・ダ・セスト
《老人の頭部》
1510 年頃/1515 年頃
トリノ王立図書館蔵 ©Torino, Biblioteca Reale

画家・レオナルドは正面から肖像を捉え、人物の顔を正確に織密に描写する上で、その人の内面をもきちんと捉えることを意識していました。当時、観相学と呼ばれる性格と外見の呼応に目を向ける学問が流行しており、本作においても、口元を固く結ぶ老人からは頑固
な性格を思わせます。また、赤い地塗りが施された紙に赤いチョークを用いて描かれているのも特徴です。

《美しき姫君》にまつわること

レオナルド・ダ・ヴィンチ(帰属)
《美しき姫君 (ビアンカ・スフォルツァ?)》
1495 年頃 個人蔵

ビアンカ・スフォルツァというスフォルツァ家の子女を描いたとされる《美しき姫君》。近年において作品に残された掌紋からレオナルド作ではないかという議論が起こりました。髪留めや服飾を含めた肖像の正確な描写と左利きを思わせるハッチング、ペン、インク、赤チョーク、黒チョーク、鉛白といった画材、羊皮紙という媒体に関するレオナルドの知識などから真作とする説がありながら、同時代の作家による作とする説、19世紀の模倣者による精妙な贋作とする説まで諸説に分かれています。 

イベント詳細
名称:レオナルド×ミケランジェロ展
会場:三菱一号館美術館
住所:東京都千代田区丸の内 2-6-2
会期: 2017年6月17日(土)〜9月24日(日)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜休館(但し、祝日は開館)
公式サイト:http://mimt.jp/

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