国立新美術館で開催「ミュシャ展」レポート!大迫力の「スラヴ叙事詩」全20作は必見!

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東京・六本木の国立新美術館で、3月8日(水)から6月5日(月)まで国立新美術館開館10周年・チェコ文化事業「ミュシャ展」が開催されます。超大作《スラヴ叙事詩》全20作をチェコ国外では初めて公開する、大注目の展覧会です。気になる見どころをasoview!編集部が取材を元にお伝えします!

アルフォンス・ミュシャって?

19世紀から20世紀にかけて活躍した、アール・ヌーヴォーを代表する芸術家のひとり、アルフォンス・ミュシャ。ミュシャはフランス語読みで、チェコ語での発音は「ムハ」といいます。オーストラリア領モラヴィア(現チェコ)に1860年に生まれ、ウィーンやミュンヘンを経て、27歳でパリに渡って画を学びます。不遇の時代が続きましたが、34歳の時に大女優サラ・ベルナール主演の舞台「ジスモンダ」のポスターを手がけ、評判に。一躍時代の寵児となりました。

左から「ジスモンダ、「ハムレット」、「ロレンザッチオ」
堺市

美しく華やかで洗練されたポスターやグラフィックを手がける一方、ミュシャは故郷のチェコや、自身のルーツであるスラヴ民族の文化、歴史をテーマとした作品を多数制作しました。1910年から晩年の約16年をかけて手がけた20作の連作「スラヴ叙事詩」は、そのすべてが巨大な作品。古代から近代のスラヴ民族の苦難と栄光を映し出す、一大スペクタクルです。

大迫力!チェコ国外で世界初の全作展示「スラヴ叙事詩」

今回の「ミュシャ展」の見どころは、いままでチェコ国外では世界で初めて全20点を展示するもの。1928年に発表され、プラハ市に寄贈された「スラヴ叙事詩」ですが、長らく日の目を見ることがありませんでした。1960年からモラヴィアのモラフスキー・クルムロフ城でひっそりと夏期のみ展示されていたものの、ほぼ見る人はおらずという状態。2012年になってプラハ国立美術館ヴェレトゥルジュニー宮殿(見本市宮殿)にて全作品がついに公開されました。

左から「原故郷のスラヴ民族 トゥーラニア族の轍とゴート族の剣の間に(部分)」
「グルンヴァルトの戦いの跡 北スラヴ民族の連帯」
「ヤン・アーモス・コメンスキーのナールデンでの最後の日々 希望の消滅」
プラハ市立美術館

まず部屋に入って驚くのは、その作品の大きさ。縦6メートル、横8メートルという圧倒的なスケールで、見るものをスラヴ民族の歴史の世界に誘います。

原故郷のスラヴ民族 トゥーラニア族の轍とゴート族の剣の間に
プラハ市立美術館

最初に目に入るのは「原故郷のスラヴ民族 トゥーラニア族の轍とゴート族の剣の間に」。こちらを見ている2人の男女と、絵の右上に描かれた3人の司祭が不思議な対比をかもし出しています。

スラヴ式典礼の導入 汝の母国語で主をたたえよ
プラハ市立美術館

このように、「スラヴ叙事詩」には下半分に現実や歴史的事実が描かれ、上半分には空想やミュシャの思うことが描かれる、という構図のものが多いです。

左から「クロムニェジーシュのヤン・ミリーチ 「言葉の魔力」-娼館を修道院に改装する」
「ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師 「言葉の魔力」-真理は打ち勝つ」
「クジーシュキでの集会 「言葉の魔力」-ウトラキスト派」
プラハ市立美術

3つの部屋に渡って展示されている「スラヴ叙事詩」は、見ていくのに年代順などの制約はありません。ふと目についた絵をじっくり見て、また次の絵にうつって…大きな絵なので、絵の中に自分も入り込んでしまうような気分になることも。幻の傑作をじっくりと鑑賞しましょう。音声ガイドを借りて解説を聞きながら鑑賞すると、絵に込められた思いや情景などをより深く理解することができます。おすすめです。

「スラヴ叙事詩」が展示されている3つ目の部屋のみ、撮影が許可されています。写真を撮ろうと思っても絵が大きくてなかなか全部が画面に収まりませんが、気に入ったシーンを切り取ってみては。

左から「ロシアの農奴制廃止 自由な労働は国家の礎」
「聖アトス山 正教会のヴァティカン」
「スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い スラヴ民族復興」
プラハ市立美術館

Ⅰ ミュシャとアール・ヌーヴォー

「スラヴ叙事詩」の展示に続いて、ミュシャがどのような経緯で「スラヴ叙事詩」を書くに至ったかをたどります。パリで雑誌や本の挿絵を描くことで生計をたてていたミュシャ。1894年、34歳の時に大女優サラ・ベルナールのポスターを手掛けたことで人生が一変します。

左から「ジスモンダ、「ハムレット」、「ロレンザッチオ」
堺市

それがこの左「ジスモンダ(1895年)」のポスター。モザイクタイルのような装飾に、丁寧に書き込まれた衣装、そして妖艶な魅力をたたえるサラ・ベルナール。このポスターはたちまち評判となります。サラ・ベルナールの信頼を得たミュシャは、その後6年間にわたりベルナールとの契約を交わし、舞台の宣伝ポスターを手がけました。

4つの花「カーネーション」「ユリ」「バラ」「アイリス」
堺市

こちらは1897年に発表された4つの花「カーネーション」「ユリ」「バラ」「アイリス」。今のマンガの表現にも確実に影響を与えているのでは、と思える美麗なデザインです。ミュシャの作品はリトグラフで発表され、安価で求められたため、民衆の支持がより広がりました。

ラ・ナチュール
堺市

こちらはミュシャの彫刻の中では最も有名な「ラ・ナチュール」。ミュシャの絵に描かれている美しい女性は、立体になっても健在です。

Ⅱ 世紀末の祝祭

1900年パリ万国博覧会「ボスニア・ヘルツェゴビナ館」壁画の下絵
堺市

19世紀末から20世紀にかけてのヨーロッパは、画期的な発明や技術の進歩により社会が大きく変化した時期でした。1900年にパリ万国博覧会が開催され、ミュシャはボスニア・ヘルツェゴビナ館の壁画を担当するなど多くの作品を出品します。

スラヴの連帯
プラハ市立美術館

また、1910年にはミュシャの故郷・チェコにプラハ市民会館が建設されます。ミュシャはここの天井画と壁画を担当。「スラヴの連帯(1910-1911)など」当時の下絵が展示されています。

左から「英知-プシェミスル朝のエリシュカ」、「戦う魂-ヤン・ジシュカ」、「誠実-ヤン・アーモス・コメンスキー」、「自力Ⅲ(犠牲)」
プラハ市立美術館

美しい壁画が今でも飾られているプラハ市民会館。実際に現地に行ってみたくなりますね。

Ⅲ 独立のための闘い

19世紀から20世紀にかけては、小国が独立を求める闘いの時代でもありました。1910年にチェコに戻ったミュシャの作風には変化が見られます。

ヒヤシンス姫
堺市

スラヴ人である妻・マルシュカの丸顔でふっくらした体型をベースにした女性像が際立つようになります。バレエ「ヒヤシンス姫」のポスターもその一つ。エネルギーに満ちた女性の姿が描かれています。

上から10コルナ紙幣、50コルナ紙幣、100コルナ紙幣、500コルナ紙幣
OGATAコレクション

1918年にチェコスロヴァキア共和国が独立すると、ミュシャは紙幣や切手のデザインを無償で引き受けます。美しい女性像はここでも健在です。

Ⅳ 習作と出版物

『主の祈り』(仏語版)左)装飾ページ、右)挿絵ページ
プラハ市立美術館

ここではミュシャが行った本の挿絵や、ポストカードなどが展示されています。さらに「スラヴ叙事詩」の構想を練っていたミュシャは、スラヴの人々をモデルにした習作や素描も多く残しています。

ここまで見てきて「またスラヴ叙事詩が見たい…」と思った方は、「独立のための闘い」の展示の場所からスラヴ叙事詩の展示室に戻れます。

スラヴ式典礼の導入 汝の母国語で主をたたえよ
プラハ市立美術館 ©Prague City Gallery

ミュシャのことを知ってから「スラヴ叙事詩」を見ると、また違った視点から楽しめるかもしれません。

オリジナルグッズもチェック!

この展覧会限定のオリジナルグッズが販売されています。

今回展示されている全作品を収めた図録は、ミュシャファンならゲットしたいところ。

「スラヴ叙事詩」やサラ・ベルナールのポスターをモチーフにしたクリアファイルは、裏面にも絵が描かれている豪華なもの。

チェコで大人気のアニメーション「クルテク」とコラボレーションしたグッズも。愛嬌あるモグラの顔が気になります。

チェコのデザインを取り入れた小物もたくさん。東欧ならではのデザインはなかなか日本では入手できません。

壮大な世界観に引き込まれてしまうこと間違いなしの「ミュシャ展」。ぜひこの機会に足を運んでみてはいかがでしょうか。

イベント概要
名称:国立新美術館開館10周年 チェコ文化事業「ミュシャ展」
開催期間:2017年3月8日(水)~6月5日(月)
時間:10:00~18:00 ※毎週金曜日、4月29日(土)~5月7日(日)は20:00まで。入場は閉館の30分前まで。
休館日:毎週火曜日 ※5月2日(火)は開館。
会場:国立新美術館 企画展示室2F
所在地:東京都港区六本木7-22-2
料金:大人1,600円、大学生1,200円、高校生800円※中学生以下は無料
公式サイト:http://www.mucha2017.jp/
グッズ企画販売:NHKプロモーション

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